ティッシュの横顔は、いつもひょうきんだ。
美味しいスープを慌てて飲んで口から溢れておっとっととなった時も、ランニングの後に汗びっしょりのままでぼやぼや遊んでいて突如鼻水が止まらなくなった時も、よそ見をしながらコーヒーを淹れてテーブルの上がベチョベチョになった時も、ティッシュがなければ大変なことになってしまう。ウチの中で、ティッシュを使わない日はない、必需品なのだ。いつも私の暮らしを全力で助けてくれる。だからこそ、置いた時の風情もどこから見ても素敵な感じにキメたいと思うのだ。インテリアに合わせた色のケースに入れてみたり、綺麗なスカーフで包んでみたり、あの手この手を使って素敵に置こうと試みるのだけれど、その横顔のせいで、どうしてもそこだけが「ひょうきん」になってしまう。つまり間抜けなのだ。どこに置いてもキマらなくて、どこにも置きたくないと思ってしまう。
いつものランニングの最中にふと思った。今日はちょっと体が重いなあ、重力がもうちょっと少なかったらその分楽チンなんじゃないかと。あ、そうだ、ティッシュの重力の向きを変えてみよう。デスクの下に貼り付けたらいいんじゃないかと。早速家に戻って、ティッシュをデスクの下に貼り付けてみた。最近買ったばかりの3M社の強力両面テープをティッシュケースの底に貼りつけて、それをデスクの天板に下から貼り付けた。そうしたら、ティッシュの横顔が変わった。箱からふわりと飛び出したティッシュが、はらはらと舞い落ちるようだった。儚げだ。一気に、ひょうきんものから儚げな感じに変身した。これはすごい、キマったと思った。
デスクの下に貼り付けられたティッシュは、デスクの前に座って本を読んだり、あれやこれやしていても見えない。そして、当然デスクの上の場所も取らない。それでいて、手を伸ばせば一瞬で届くところにある。これめちゃくちゃ便利じゃないかと感動した。難点なのは、間違って取り出した時だ。一枚出しすぎて戻そうとしたら、もしゃもしゃとティッシュの穴につっこむことになった。儚げな感じが台無しになってしまった。一度引き出したら戻すの禁止だ。それにしても、50年以上生きてきて、こんなことに気が付かなかったとは。とりあえずは、この箱の最後まで使ってみようと思う。一箱使い切った時に、強力両面テープ剥がせるかどうかが心配ではあるけれど。
ところで、ティッシュという呼び方なんだけど、どっちかというと「チリガミ」の方が好き。ぜったいチリガミの方がかわいいと思う。