けんかを終わらせる方法
けんかをした時、どのタイミングでどのように仲直りするかがいちばん難しい
何十回と喧嘩を経験してきたけれど、一番やっちゃいけないと思ってるのは、
喧嘩の状況に耐えきれずに「ごめんね」とついつい謝ってしまうことだ。
心底自分の方が悪かったという反省心からの「ごめんね」ならよいのだが、
まあ、わたしも悪かったかもしれないけど、そっちもよくなかったじゃんと思っているくせに、ずっとケンカしてるのもめんどうだし、なんか大人気ないなと妥協して、ごめんねと言う。
とにかく場を納めよう、的な気持ちだ。
そうすると、大抵はそこからさらに炎上する。どれだけ未熟なんかとは思うが、まちがいなく家内炎上する。
それを何度か経験して、先日は、本心で謝りたくないのだから、そのまま放置するというやり方をとってみた。
もはや、もめた原因は忘れちゃったのだが…
その日はぎょうざだった。
正直、こんな喧嘩している日に、あの作業はやりたくない、と思った。しかし、そこはシェフに従わなくてはいけない。作ってもらっているのだから。
つまりうちのぎようざは、皮から作る。
その工程を一緒にやることになる。
いつものように、健一くんが生地を作り、発酵までさせてくれる。
次はわたしの番で、発酵したもちもちぷよぷよの赤ちゃんのふとももみたいな生地を、16グラムずつに切り分ける。生地を触っている時は、嬉しくてたまらない、この感触、だいすき。粉を振った台の上で、綿棒にもしっかり粉をまぶしつけて、ひとつひとつを丸めた生地を軽く手でつぶして、今度は綿棒で平らに丸く伸ばし、包むための皮を作る。なかなかまんまるにはならないけど、楕円でも四角でも、なんでもありが自由で良いんだ。
その間に健一くんは、今度は具を作る。具ができたら、できた皮で具を包んでいく。毎回やる作業なのだけど、生地から皮を作り、包み終えるまで一連の作業を切り取ると、だいたい40分くらい。お互い作業中は、イヤホンが耳には入っていて、違う音声を聴いている。真剣に聴きたいものを聴いている。基本おしゃべりもしない。皮が大きすぎるとか、厚すぎるとか、シェフから時々クレームが入るだけで、基本黙々と、粉を振り、生地を伸ばし、生地で包む、並べる。
この作業が終わるくらいまでは、ケンカのイライラが若干残っていた。
フン、しゃべりたくなんてないんだもんね、くらいの感じだった。
餃子が焼き上がり、
ホットプレートにかぶせたフタをパッカーンと開けた時に、眩しいくらいにギョウザが勢ぞろいし、美味しそうににこにこと並んでこちらを見ていた。
それを見た瞬間、
もういいか…
と思った。
なんやかんや、お互い主張はあるけれど、こうやって一緒に助け合って生活している。手を動かす作業をそばで一緒にやることで、そのリアリティを感じた。ケンカが深いところでは解決しなかったかもしれないが、もういいやと思ったし、今の時点では、それが私たちにとっての「解決する」ということかもしれない。
これまでは、とことんわかってもらうまでしつこく詰め寄っていたと思う。わかってもらわないと、一緒にいられないと思っていた。(子供っぽい発想だったと思うけど)
そもそも、相手を完全に理解するなんて無理なんじゃないかと思う。理解しようとする姿勢だけで十分だと最近は感じている。
焼き上がった時には、
わたしのケンカのもやもやは、スゥーッと消えていた。健一くんがどうだったかは、聞いてないけど。
ひょっとすると、これがホットプレートのミラクルかもしれない。
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