甘いもが食べたい

「何か甘いものが食べたい…」

そう思って時計を見ると

17時45分…

店はもうどっこも開いてない時間だ。

京都に越してきて唯一困ったこと。

それは、開いていて欲しい近所のお店が、18時になるとどっこも閉まっていることだ。

もちろん、河原町とか、烏丸とか都会?に行けば開いている店もたくさんあるけれど

うちからは遠いのだ、そこまで行くのは。

茅ヶ崎の時は、駅の周りにはなんでもあった。

隣町の藤沢に行けば、デパートがいくつもあって、

あんなものも、こんなものも選び放題だった。

田舎は寂しい…

と京都を田舎扱いしてしまったけれど、

よくよく考えると、夕方になって身体と口が「甘いもの」を求める時は、決まって何かしらその日が「不燃焼」だった日だと気づいた。

思ったほど仕事が捗らなかったとか、やろうと思っていたことに手がつけられなかったとか、そんな残念な気持ちの時だ。

自分で自分のことが情けなかったり、

他のみんなはとっくに終わっているのに・・・という謎の劣等感も膨らんでいたりする。

その凹んだ気持ちを補うために、ちょっとした刺激が欲しくなる、紛らわそうとしている、それが甘いものなんじゃないかと思った。

本屋さんも文房具屋さんもないし、カフェも空いてない、パン屋さんもすぐ閉まる。

仕方がないから、とりあえず、外に出て駐輪場に向い、ピンクの自転車にまたがった。

ペダルをこぐ足にぐっと力を入れると、すーっと思った以上に進んだ。

気持ちよくなって、いつものランニングコースを自転車でびゅんびゅん走る。

風がちょっと肌寒いけど気持ちがよかった。

国際大学に通っていた頃、モンゴル人の友達が

日本はモンゴルと比べて風が吹いていないから風が恋しくて、ビュンビュン自転車に乗って風を作るんだよ

そう話していた言葉を思い出した。

お店は空いてないけど、自然はある。

少し走ると、里山や池や大きなお寺や古墳・・・

刺激は少ないけれど、いいところだなと思った

田舎は寂しいなんて言ってごめんね

そういえば、

すぐそばに、夜になると人通りの少ないところがあるのだけど、

以前、そこで、いのししの親子を見つけたことがある。

子どものイノシシが、大きいイノシシをちょろちょろと追いかけていた。

健一くんが車でシカにぶつかりそうになったのも、そのあたりだったらしい。

次に、シカらやイノシシに会ったら、どう反応しようか・・・と考えると、ちょっとどきどきした。

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梅酒が美味しくなる日