娘の卒業式
娘が専門学校を卒業しました。
4月からどこかの企業に就職する訳ではないのですが、一人の社会人として生きていくという決意だけはきちんとできているように感じました。
娘は、4年前に高校を卒業し、大学に進学しました。指定校推薦で大学に進学したのですが、大学生活は想像していたのと違い、彼女にとってはそれほど魅力的ではなかったようです。
娘には1歳年上の従姉妹(私の妹の娘)がおりまして、その従姉妹は、美容師になるべく、当時美容の専門学校に通っていました。娘は、その従姉妹と幼い頃からとても仲が良く、二人ともわがままで奔放な感じなのになぜか全く揉めることもなくずっと仲良くしていて、皆が不思議に思っていたぐらいです。娘は姪っ子をお姉ちゃんと言って慕っていました。その従姉妹が専門学校に通い一生懸命頑張っている話を聞いて、自分は何のために大学に行っているんだろうかと考えるようになったそうです。
その娘が大学を辞めたいと言ってきた時は、ようやく言ってきたかという感じで、特段の驚きはなかったのですが、彼女はその話を私にするまでに、かなり葛藤があったそうです。その葛藤というのは、そんなことを言ったらお父さんに怒られるんじゃないだろうかという、そんな恐れからきたものだったようです。
以前の私は、良い大学に行って良い企業に就職するのが子供たちにとって良いことだという価値観に囚われていました。息子にもそんな話をしてプレシャーを与えていたのだと思いますし、それを見ていた娘が大学に行かなきゃと感じたとしてもおかしくはありません。彼女が大学に進学したのは、本当に行きたかった訳ではなかったのかもしれません。もともと大学生活に大きな魅力や期待を抱くことなどなかったのかもしれません。
その娘が、半年で大学を辞めるという決心をして、メイクアップアーティストになるためにここに行きたいと言ってきたのが、卒業した「東京モード学院」になります。
私の息子は浪人して大学受験をしましたが、志望校には受からず、滑り止めとして受けた大学しか受かりませんでした。その時に、私に「こんなところしか受からず申し訳ない」と言った息子の表情は今でも忘れられません。
「そうじゃない、申し訳ないのは俺の方だ」
そう思いました。
私には見えない部分で、私の価値観の押し付けがどれだけ彼を苦しめたのか、どんなにに辛い思いをさせてしまっていたのか、そう思うと、申し訳なさと、自分が囚われていたちっぽけな価値観への恥ずかしさでいっぱいでした。
そんな自分のつまらない価値観を壊すきっかけをくれたのは、娘だったのかもしれないなと、今になって思います。離婚してから一時期、娘との関係がうまく行かない時期がありました。離婚したという娘に対するどこか後ろめたさのようなものから、彼女に色々と干渉していたのです。彼女の将来を勝手に憂い、だからこうすべき、ああすべきという自身の価値観を押し付けていたのだと思います。
ある時、ふと思ったのです。
俺はどうしたいのだと。
どうしたら自分が一番幸せな関係なのだと。
その時思ったのが、「彼女と仲良くしたい」ということでした。
娘のことが大好きなのに、なぜ仲良くできないんだと考えました。私は、反抗期とか、そういう言葉で物事を括ってしまうのが大嫌いです。なぜなら、それって、自分自身の問題を反抗期という子供の問題にすり替えてしまっていて、だから仕方ないと、自分が何もしない言い訳を作っているだけだと思っています。だから、考えました。その時、ちょうど、自己啓発のセミナーにも通っていたこともあり、そこでも色々なことを学びました。
考えた結果は、「仲良くしたいなら、娘のことを認めて対等な関係になるべきじゃないのか」ということでした。自分の価値観を押し付ける人と仲良くしたいと思う人はいません。それが例え親だとしてもです。親の方に、親子だからなんて甘えがあれば、より一層仲良くなんかなれないでしょう。だから、子供たちのやることに制限をかけるのではなく、応援してあげようと、そんなことを思ったのです。これは甘やかすのとは違います。親としては、制限をかけるよりも色々と心配なことが増えてしまう対応だと思います。だけど、心配があるのは親の方であって、その自分の心配を子供の行動に制約をかけることで解消しようとするのは違うんじゃないかと、そんなことを思ったのです。
もしも、私が以前のように自分の価値観の押し付けをしているような父親だったことで、娘が学校を辞めたいと言えず、何とか誤魔化しつつ大学に通っていたら、息子が自責の念を持ちながら大学に通うような生活を送っていたら、そんなことを考えるとゾッとします。
卒業式はコロナで特段の式典はなく、教室で卒業証書を受け取るだけだったようですが、沢山の写真を送ってきてくれました。卒業発表では、多くのグループがある中で、学生による投票で3位になったと喜んで報告してきてくれました。バイトでのこと、学校でのことを沢山話して聞かせてくれます。わがままいっぱいに私に接してきてくれます。
いつもありがとう。
卒業おめでとう。