想いは、強さじゃなくて美しさとしてあらわれる

京都市の北の方に、毎週通っているパン屋さんがあります。
ハード系のパンが本当においしくて、はむはむかじりつくたびに、
あごが強くてよかった、歯が強くてよかった〜と思う。

SNSもやってないし、「京都の美味しいパン屋さん◯選」みたいな特集にも載ってない。
たまたま自転車で前を通りかかったとき、店先にあった手書きの看板が可愛くて、
お店の中に吸い寄せられたのが最初だった。

驚くほどおいしい。
東京中パン屋巡りをしたけど、それに比べても、ここはほんとうに極上の味。
比較的高加水で、みっしりしているけど、重すぎない。
パンの袋に鼻を突っ込むと、粉の香りに襲われて、むせる。
でもそれがまた、幸せの香り。

今日はそのパン屋さんを目指して車をだしてもらった。
相変わらず、フランスの田舎のパン屋さんみたいに可愛くて、店内は賑わっていた。
「混んでるね」なんて言いながら、トレーにパンをのせていく。

広くない店内、レジ前に並ぶのは2〜3組だけど、みなさんしっかり買い込んでいて
パッキングとお会計に少し時間がかかっていた。
その様子を何気なく見ていて、なんだか目が離せなくなった。

おそらくご夫婦で営まれているこのお店。
奥さんらしき女性が、ひとつひとつ丁寧にパンを紙袋に入れていく。
ちょっと古めのレジも、味があっていい。
パンの名前と値段を口にしながら、レジに打ち込み、がちゃーんと引き出しが開いて、現金のやりとり。
その一連の動きに、なぜか見入ってしまった。

ニコニコしているわけでも、世間話をするわけでもない。
でも、すべての所作に無駄がなく、丁寧で、やさしい。
角がなくて、柔らかくて、しん…とした清らかさがある。
マスク越しで表情は見えないけれど、にじむような人柄を感じた。

ひとりのお客さんへの対応が終わるまでは、完全に集中していて視線もぶれない。
でも、お釣りを渡し終えたタイミングでふっと目線を外し、入口をそっと見る。
「いらっしゃいませ」とは言わないけれど、優しいまなざしがあった。

それを見ていて、ふと思い出したのは、少し前に東京の駅ビルでパンを買ったときのこと。
大きなお店で、アルバイトらしき女性たちがレジを分担していた。
そこで急いでいたわけでもないのに、なぜかイラッとしてしまった自分がいて、
「なんでだろう?こんなとこでイラつくなんて…」と考えても、理由ははっきりしなかった。

でも今日、その違いが少しわかった気がする。
もしこの時のアルバイトの女の子と今日のお店の女性がふたりが並んで作業をしても、
スピードや動きに大きな差はないと思う。
でも、印象は全然違う。

その違いって、所作の「きれいさ」じゃなくて、
たぶん、その奥にある「思い」なんじゃないかと思う。
お客さんへのまなざしとか、仕事に向き合う姿勢とか。

自分のお店かアルバイトか、という違いだけじゃなくて、
どんな立場でも、思いのある人はいるし、
見た目の動き以上に、内側の在り方って伝わるんだなって思った。

取り組む姿勢も、相手への思いも、
実は、ぜんぶ透けて見えているのかもしれない。

今日のあのパン屋さんの空気、残しておきたくて、ここに書きました。
想いって、声に出さなくても、伝わることがある。
強さじゃなくて、ただ美しさとしてあらわれることもあるんだなって。
帰り道、なんだか自分の所作のことも、少し考えていました。


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