おなじくらい下手がいい

春分の日に、今年4回目のスキーに行ってきた。

この年で、1年に4回もすべるなんて、2月初旬には思っても見なかったけれど・・・

新潟で今年初めて滑った時に、リフトの上で凍えながらふたりでしみじみ話した。

「レンタルのスキーウェアって、(パーソナルカラー的に)ブルベの色が多くてまったく似合わないし(うちはふたりともイエベ)�生地がどうも薄くて、すぐ雪でびちょびちょになっちゃうから、すごく寒い、

そうなると、スキーの楽しみが半減するよね。やっぱり自分のウェアほしいね。」

帰ってきて、なんどかメルカリの画面を検索しているうちに

思わず、スキーウェアを買ってしまった。

見つけたウェアが、それはそれは、かわいいウェアだったから。

かわいくてかわいくて、すっかりウェアに恋してしまったのだ。

スキー場じゃなくても着たい、家の中でも着たい・・・そのくらいかわいいやつだった。

ウェアを着たいという気持ちがあふれて、

「今年もう一回くらい、スキーに行きたいね・・・」とうっかり言ってしまった。

それを聞いた健一くん、楽しいこと大好き、気象オタクの行動はみごとだった。

ある日LINEにぱかぱかといくつものメッセージが送られてきた。

「◯月◯日に、スキーに行かない?」

そのメッセージの後には、ゲレンデのURLがいくつも並んでいた。

最後に、「どこにする?」

と書かれていた。

そんなこんなで2回滑りに行き、さすがにもう終わりかと思ったら

今年は3月が寒いからもう一回滑れそうだよ、とうれしそうに話しかけてきた。

さすが健一くん・・・

滋賀のスキー場の駐車場に車が停まった時、まわりを見回して驚いた。

「えっ、ココ、ほんとにスキー場?雪ぜんぜんないよね・・・」

ところが・・・

春のようなゲレンデに降り立ち、何回かリフトに乗って山頂に近づくにつれて、

曇ってくる、雪がちらついてくる、何本か滑っているうちに

風が強くなる、雪が本降りになる、風が雪を巻き上げながらごうごうと吹き荒れる、雪が強まる、気がつくと、すっかり吹雪だった、真冬だった。

今年で一番吹雪いてるね・・寒いよお・・・椅子がふかふかの冷たくないリフトに乗りたい・・・

吹雪のおかげで、ふりたてふかふかさらさらのいい雪だった。

滑っている時は、ビビりの私にとっては怖さとの戦いだ。高速のスピードが怖い。

一歩間違ったら、止まれなかったら、コースアウトして死んでしまうなあと思いながら、ぎりぎりのスピードにあげて滑る。

スノーボーダーが意外な動きをして、やばっ、ぶつかる、と思った瞬間、気がついたら、ぶつかるのを避けて思いっきり転んでいた。

ものすごい集中とひりひり感、こういうの結構いやじゃない、かなり好きだと思った。

普段はぴたっと封印されている自分のなかのフタが開いていくようにも感じる。

一方で、スキー場で過ごす時間の半分は、リフトに乗っている時間だ。

リフトから見る雪景色はおやつだ。

枝の上に雪が積もっている、チョコレートコーディングのお菓子の上にお砂糖がかかっているようにしか見えない。

甘くておいしそう・・・帰りに、あのケーキ屋さんによりたい・・・といつも想像しながらうっとりする。

なんだかんだと、リフトの上でおしゃべりするのも楽しい。

滑るのもリフトも楽しいと書いたけれど、一旦ランチを食べにレストランに入ると、毎回もう外にはぜったい出たくないと思う。

健一くんだけで滑ってきておくれ〜と言う、わたし昼寝して待ってるから・・・

帰るタイミングをきめるのは難しい。

1日券の元をとれただろうか・・・などとせこいことを考えてしまうのは私の方で

健一くんは、もう相当すべったから帰ろうかと話す、この人はピュアで損得がない人だなと改めて尊敬する瞬間だ。

「こうやって一緒にスキーを滑れるのは、同じくらい下手だからだよね。」

そこまで上手くなりたいわけじゃないけれど、もっと楽しむために、一緒に上手くなれたらいいなと思った。

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